某所で勉強会をした話

某所で勉強会の講師を務めさせて頂く機会に恵まれた。私よりもずっと素晴らしい方々を相手にお話をするのは大変緊張することだが、実入りも大きい。結果としては大変好評で、嬉しいと同時に有り難い。聴いて下さった皆様に感謝。

勉強会にも複数の形態があるとは思うけど、今回は「講師一名 + 聴衆 n 名」という形態。以下は、それを踏まえた上で読んで頂ければ。

反省点

反省すべき点は多々。これを読まれる方々の参考になるかもしれないので簡単ながらメモ。

  • 完全な準備不足

とにかく準備不足だった。準備の時間は必要以上に掛けたにも関わらず、掛けた時間の質が結果として悪すぎた。掛けた時間に内容が比例しておらず、結果として大した準備を行っていない状態になってしまった。私が考えるプロの資格の一つに「掛けた時間と成果が比例しなければならない」というものがあるが、それに照らせば、今回の自分は完全にプロ失格だ。

  • 時間不足だった

時間不足というよりも、内容を詰め込みすぎた。詰め込んだ内容そのものは最低限だと思うが、「与えられた時間で最大の価値を」という観点で言えば最低限ではなかった。より価値を生み出すような構成があったはずだが…。

  • 話のテンポが悪かった

というより、テンポが良すぎた…つまり聴いて頂く側の咀嚼能力を超えて情報を提供し過ぎた。そもそも内容が多かったせいもあって、いつもなら必ずワンテンポを置くような局面でも、そういった気配りが出来なかったのは情けない。聴いて頂く側が消化不良になるようでは講師として失格だ。

  • うまくデモが出来なかった

いやー、これは人前で話す者としては最悪。デモを行う環境そのものを事前にちゃんと調べていないというのは、そもそも話す以前の話だよね。プレゼンテーションの練習そのものは誰しも行うと思うけど、(マシン、使うツール、周辺機器の有無も含めた)本番と同等の環境での練習を怠ると、こういう「本来なら防げるミス」に陥ってしまう。「自分は本番に強いから大丈夫」なんて過信しているとこういう目に遭うってことを嫌という程思い知った。

  • 慣れたツールを使うべき

今回は故あって普段使わないツールを使ってプレゼンテーションをしたけど、やはり慣れたツールで行うべきだし、そうでなければしっかりと練習を積むべき。ツールの操作そのものは練習していたおかげで問題こそなかったけど、ちょっとしたトコロでボロが出ちゃうよね。変なトコでカッコつけるより(今回はカッコつけたわけじゃなくて必然だけど)、馴染んだツールを使うか、もしくはその「カッコいいツール」が馴染むまで練習することが大切。

良かったトコ

一つも良かったトコがないとすれば、それはそれでプロ失格。少しでもいいから探す努力が大切だと思う。何でもいいから探して、次からはそれを良い方向へと発展させていければいいと思うので。

  • ネタをネタとして無理にアピールしない

本当にウケを狙うならそれもありだけど、分かる人が分かって「くすっ」ってしてくれる程度のネタなら、そのレベルに留めておいたほうが良い。また、そういうのをちょこちょこ(鬱陶しくならない程度に)鏤めておくと、プレゼンテーションに対する(聴かれる側の)集中力も途切れずにすむような気がする。勿論、TPO を弁えた上での話。

  • 単調にならない構成

今回、自分としては波瀾万丈な(ってどんなんだ)内容を盛り込めたと思う。詰め込み過ぎではあったけど、構成については飽きさせずにお話を聴いて頂けたのではないかと思う。

  • 繰り返し

大切なことは繰り返す。間を置いて繰り返す。局面や舞台や背景を変えて繰り返すことによって、聴いて下さる方の意識に入っていく…ような気がする。今回はそんなに実現出来なかったけど、次回は心がけよう。

得られたコトと再確認出来たコト

  • 自分の常識は他人の常識ではない

今回改めて教えられたことは「自分の常識は他人の常識ではない」ということ。これは「自分では当たり前と思っていた知識でも、必ずしも他人は知らないこともある」ということ。

実際にお話をさせて頂くまで、今回の内容はつまらないものなんじゃないかと心配していた。つまり「そんなの知ってるよ」という反応になるんじゃないかと思っていた。しかしいざ蓋を開けてみれば、「いやー、そんな機能知らなかったよ」「これまで当たり前と思っていたけど、実は違うんだね」のような反応を多数頂いた。つまり私の常識は、他の方々の常識ではなかったのだ。

勉強会の価値とはこういうところにあるのだと改めて感じた。自分より優れている人でも、その全てが自分より優れているわけではない。勉強会でお話をさせて頂くと、自分の価値を改めて見出すきっかけになる。大切なのは自分が優れていると思えることを発見すること、そしてそれを他者に give 出来るレベルまで持っていけるかどうかだということ。そうすれば、そういった方々から別の give を与えてもらえるかもしれない。自分が give 出来るかどうかなんて小さいことを考える前に、まず自分に出来ると思うことを、自分に出来る最高のレベルで give しようと試みなければいけない。勉強会ってのは、そういう機会の一つなんだと思う。

「give & take」ってよく言われるけど、自分が give 出来るレベルになければ take なんてあり得ない。しかし、自分が give 出来るコトは意外なトコロにあるのかもしれない。まずはそれに気がつくかどうかだけど、まずは「これかもしれない」ってコトを表に出して他人から評価を頂かなければ、そもそも「give 出来るかどうか」なんて判断さえ出来ないんじゃないかと思う。

プロとして、関係する様々な分野に見識を深めるのは当然のこと。しかしプロを名乗るなら、自分の道具箱には磨き込んだ刀、或いはどんなときにでも頼りになる道具を必ず格納しておくべきだと思う。そしてそれが常に最大のパフォーマンスを発揮出来るように準備しておくこと。ナマクラ刀を 100 本持っているシロウトよりも、2 本しかないけど剃刀のように切れる刀を持ったプロのほうが信頼出来るのは当たり前(私がプロとして信頼出来るかどうかはまた別にして)。id:HappymanOkajima 氏曰くの「伝家の宝刀」じゃないけど、肝心なところで使えない刀じゃ意味がない。

  • 勉強会の最後に「一言ずつ感想を」

勉強会の最後に、ある方の提案で「一人一言ずつ感想を述べる」ことになったのだが、これがとても有用なツールだと気が付くまでに時間は掛からなかった。これによってある人の気付きを、別の人も共有することが出来る。その一言から、自分が気がつかなかった知見や視点を得られる。何気ないことかもしれないし、簡単に出来ることではあるんだけど、とっても大切なことだと思った。100 人とかの勉強会(ってあるのか?)だと無理かもしれないけど、勉強会におけるツールの一つとしたい。

というわけで

本当につたない講師でしたが、聴いて下さった皆様、ありがとうございました。私自身も一つ大きくなれたような気がします。