『マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)』

2006 年には既に日本でも話題に上っていたというマイクロフォーマット。実は先日、『RESTful Webサービス』を読み終わるまで、その存在すら知らなかった。この手の「Web 上で新しく始まったアレコレ」方面については、ちっともアンテナを伸ばしていなかったのがバレバレだ。

マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)

マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)

マイクロフォーマットに関して包括的に説明された良書。400 ページ超の内容で、手に取ると多少のずっしり感があるけど、HTML や CSS の知識がそれなりにある人ならサクサク読めると思う。

第一部では「マイクロフォーマット」というものが何であるかについてを簡単に述べた後、マイクロフォーマットを利用する為のツールや、現実にマイクロフォーマットを利用しているインターネット上のサービス(Technorati など)を幾つか紹介し、読者がマイクロフォーマットによって得られる利点を明確に示している。この 40 ページ足らずで、マイクロフォーマットとは何か、それを利用することによってどんな利益を得られるのかについてを明確に答えられるようになるだろう。

第二部ではマイクロフォーマットを利用する上で最低限必要な「構造的かつ意味的な HTML」について解説した後、現在利用可能なマイクロフォーマットとして rel-tag や VoteLinks といったリンク形式のマイクロフォーマット、geo / adr といった位置情報を表現するマイクロフォーマット、そして hCard / hCalender / hReview / hResume / hAtom といった「いかにも」なマイクロフォーマットの技術について詳細に説明している。フォーマットの説明というのは大抵退屈なものだが、本書では既存のサービスとの統合例や、マイクロフォーマットで整形されたデータを CSS で美しくレイアウトするにはどうすればいいかといった話題を盛り込むことで、説明が単調になることを避けている。実際に写経しながら読めば、理解もより深まるはず。

第三部では現実にマイクロフォーマットによって様々な利益を得ている先行者として、Cork'd や Yahoo! の例を紹介している。また第四部では実際にマイクロフォーマットを新しく開発するにはどうすればよいかといった話題を取り上げている。第四部の内容は今すぐ必要となるような情報ではないかもしれないが、マイクロフォーマットがどのように開発されているのか、そのプロセスを知ることが出来て興味深い。

本書を読んで改めて感じたのは、マイクロフォーマットが現実を直視して生まれたという事実。「80/20 ルールに基づき、20% の労力で 80% の用途を満たすことが可能なフォーマットの実現」というその哲学は、実際に物事を世の中に広めて行く上で大きな力を持つということを再認識した*1。マイクロフォーマットによって情報の意味付けを行う上では、膨大な仕様書を読む努力も、ツールの導入のために高いお金を払う必要性も存在しない。Web に関わる開発者やデザイナーにもすぐ説明出来るし、実際に使ってもらえる。

既に妥当で意味的に正しいマークアップが行われている HTML ドキュメントであれば、難なくマイクロフォーマットを利用して明確なセマンティックを導入出来るというのも魅力。今ある道具に少しの味付けをするだけで、簡単に新たな価値を手に出来るというのが素晴らしい。セマンティック Web なんていつ現実になるか分かったもんじゃないけど、マイクロフォーマットは実際に Web 上の情報にセマンティックを導入しつつあるしね。

「人間第一、機械は二の次」というマイクロフォーマットの根幹を成す発想は、最近の EoD の潮流とも繋がるものがあるんじゃないかな。そういや、EoD も結局は XML 地獄に嫌気が差して生まれた考えじゃなかったか?

*1:そもそも、仕様の残り 80% のうちの半分は殆ど使われないものだし、残りの半分は実際には実装されないもんだよね。